エドウィン・ダンと輸入馬
明治12年(1879)9月4日
新冠牧馬場へ外国種馬数頭の整備を要請
新冠牧馬場の外国種馬2頭が、4日程前に死んでしまった。もしも存命ならば、明後年には60頭の駒を生ん でいたであろう。
将来、種馬の欠乏を無くすには、約4頭の種馬及び種取り牝馬10頭を来春なるべく早くアメリカ国より購入吸う事を切に願う。
数頭の種馬及び牝馬を、一時に多く購入すればその価額・運賃・看護費用を1頭あたりにすれば、実にわずかなる価額である。
新冠の牧場の様に、連綿甚だしき馬数を成育させる目的で購入することを勧奨するのは14頭の馬にて、種馬4頭・種取牝馬10頭で種馬の需要に充て絶えず馬数を増殖させるべきである。
この馬たちは、将来日本において利益を与える最も貴重なもので、当を得ば全国の馬性を改良すべき事を確信する。
純系種(サラブレット)の種馬2頭及び、同種取牝馬5頭、ならびに大きさ中等のペルシュロン種曳馬2頭及び、同種牝馬5頭を購入することを良策と考える。
2種(サラブレット・ぺ二シュロン)の馬を各7頭購入すれば、乗馬・騎兵・軽荷馬・重荷曳馬及び強壮なる農業用曳馬に用いれば、各種の馬が国内に増加するであろう。
サラブレット
ぺ二シュロン
同年9月29日
牡牝区分の放牧柵矢来の新設につき測量
新冠牧馬場に設ける牡牝区分放牧柵矢来新設のことは、決まり次第速やかに着手すべきであるが、場内は広大・高低差があり尋常の憶測には屈曲を生じ、体裁不義で開墾地の坪数並びに静内郡遠仏村方面囲い込みの広狭も判然とせず、開拓使本庁勧業課課員の派遣検測をお願い申し上げる。
明治13年(1880)2月16日
新冠において払い下げの牧馬代金・新冠改良のための費用方の件
先年中、新冠において払い下げされた牧馬代金、3、300円を新冠改良費として使う様、開拓使本庁会計局に以下の概算書を提出した。
第1条:種馬2頭をアメリカ国より購入の事
サラブレット・ペ二シュロン
①:年齢、5~8歳まで
②:体高、1.52~1.64m
③:体重、サラブレット・412㎏以上
ぺにシュロン・468~525㎏
④:両種馬とも順良児にして少しも悪点なく健全なるを」要する。
⑤:両種馬ともに体形・骨格共に正良にして緊密なるを要す。
⑥:両種馬ともに血統書正しきを確す。
⑦:既に子を生じたる血統馬なるを要す。
⑧:血統馬の代価はアメリカ国の州において、1頭500ドル程(筆者は現在の換算値を計算出来ず)で購入され、ケントケー(該当地不明)からサンフランシスコまでの運賃並びに食糧費が200ドル。サンフランシスコの港で汽搬出帆まで15日間で30ドル支払う。サンフランシスコから横浜港まで運送費が200ドルで雑費(餌代金など諸書347ドル)で合計1,804ドル(日本円で2,615円80銭と記録にある)
第2条:機械並びに農具等アメリカ国より購入の事
①: 新墾犂(新式の西洋鋤) 2挺 242円
②:草刈り機 1台 225円
③:乾草散布機 1台 190円
④:乾草叉(乾草用熊手) 24本 42円
⑤:鎌 12本 45円
合計 744円
1条・2条合わせて 3,359円80銭
引用 御雇教師 エドウィン・ダン 北海道の馬事の礎を築く
鈴木純夫