今年は薩摩馬について資料を読み込み、更に取材を試み掲載する予定であった。が、研究・取材を始めて4月で8年になるのを機会に、拙いながらも自費出版を考え「活字」に取り組んだため、ブログの掲載を更新しなかった。
発行を12月20日予定としていたが諸事情により、平成31年1月下旬になってしまった。
予定道理に発行されていれば、今回の「宮古馬の虐待」が読者の皆様に予見されていた事であろう。
そこで、拙著「過去と現在 そして未来の日本在来馬」より、「宮古馬」の項から一部分を紹介させて頂く。
宮古馬は沖縄県の指定天然記念物である。宮古馬保存会の特徴は他の保存会に例を見ない、現職市長が保存会会長であり、「馬」の所有権は宮古島市にある。飼育者は「市」から委託されおり両者の関係は「委託飼育」である。餌代金は1頭あたり月額5,000円支払われているが、委託飼育者からは月額15,000円にするよう増額補助を保存会に求ている。
「飼育にかかる経費をこれ以上自腹で負担するのは厳しい」と窮状を訴え、改善されない場合「2018年6月に馬の一部を返還せざるを得ない」と主張し、一方、保存会事務局を担う市畜産課は、平成30年4月に所管を市教育委員会に移すため「対応をこれから検討する」としている。
現在、8人の委託飼育者が48頭を飼育し、保存会が増殖目標に掲げる50頭に届くまでになった。(平成30年6月26日現在)
市は「宮古馬保存にかかる費用として、平成29年度に338,000円を計上。餌代金として月額5,000円を補助するほか、繁殖を奨励するため仔馬が産まれた場合には100,000円を助成する」と言っている。
しかし、25頭を飼育する委託者代表のN氏は「補助は実際にかかる餌代金の1/3にしかならず、年間約2,000,000円を自己負担している。馬小屋の改修にも別途費用が支出しており、これ以上は経済的に維持できない。また、飼育者が病気や島外への用事で飼育できない場合、アルバイトを雇って餌やり・掃除をしていることから、市が20頭につき一人の飼育補助者を確保するか、もしくは資金支援をして欲しい。馬の近親交配を避けるための施設と宮古馬の保存に向けた公園の整備も求める」と話す。
これに対し市長は、「主張は良く分かる。天然記念物を所管する県と餌代金について考えたい」と言い、県教委は「記念物指定の翌平成4年から5年間の暫定措置として、年間600,000円を市に補助した実績がある」言いう。
また、文化財課の担当者は「条例上、自治体から補助金申請があれば検討したい」とも話す。
しかし、N氏は「少なくとも8年前から市に対応を求めてきたが実現してもらえない。今回も何も変わらなければ宮古馬を全て返還せざるを得なくなる」と嘆いていた。
6月にN氏に状況を問い合わせたところ、「返還することも出来ず、また補助金の増額も見込めない」とやるせない返事が返って来た。
上記ことから行政が飼育者と、まともに対処しているとはとても思えない事が、お分かり頂けたこ思う次第である。
今回は、一人の飼育者が起こしてしまった事がネット上で拡散してしまい、宮古馬の全てが虐待されている様な錯覚を覚えてしまいそうであるが事実はそうではない。
市も必死になって対応し、飼育者同士が監視活動をしていると聞く。
沖縄県・宮古島市の行政と、宮古馬飼育者と真剣に話し合う場を一刻も早く持って頂くことを期待し、本年最後の掲載とする。
愛馬と亥の土鈴
読者の皆様にとりまして良き一年となりますよう!
平成30年12月30日
鈴木純夫